「3I/ATLAS」は、2025年7月1日に発見された、太陽系外から飛来した3番目の恒星間天体です。
その異常な速度と特異な軌道から、発見当初から多くの科学者や一般の注目を集め続けています。
1. 「3I/ATLAS」の基本的な概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 分類 | 恒星間彗星(非周期彗星) |
| 発見日 | 2025年7月1日 |
| 発見者 | ATLAS (Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System) |
| 名称の由来 | 「3I」は観測史上3番目の恒星間天体(Interstellar Object)であることを示す |
| 性質 | 彗星活動(ガスや塵の放出)が確認されている |
この彗星は、太陽の重力に縛られない双曲線軌道を描いて太陽系を高速で通過しており、二度と太陽系に戻ってくることはありません。
2. 特異な物理的・軌道的な特徴
3I/ATLASは、従来の太陽系内の天体とは一線を画す、いくつかの異常な特徴を持っています。
1. 異常な軌道と速度
- 超高速: 太陽系突入時、秒速約 58 kmという驚異的な速度を記録しました。
- 黄道面との一致: 極端な双曲線軌道にもかかわらず、主要な惑星の軌道が集中する黄道面からわずか 5 度以内という、不自然なほど整った軌道をたどりました。
2. 組成と挙動の特異性
- 異常な組成: 観測の結果、通常の彗星と比較して二酸化炭素と水の比率が異常に高いなど、特異な化学組成を持っていることが判明しています。
- 早期の活動開始: 太陽から遠い位置で予想よりも早く氷の昇華(彗星活動)を開始していました。
- 逆テール現象: 一時的に、彗星の尾が太陽とは逆の方向に伸びる珍しい「逆テール」が観測されました。
3. 現在の位置と今後の見通し
3I/ATLASは、2025年10月29日に近日点(太陽に最も近い点)を通過した後、現在、太陽系から離脱する途上にあります。
- 現在の状況: 双曲線軌道を描き、恒星間空間へと遠ざかっています。
- 観測のピーク: 11月下旬以降は、日の出前の東の低空(おとめ座〜しし座の方向)に見えるようになりますが、既に暗くなっているため、観測には大きな望遠鏡が必要です。
- 地球最接近: 2025年12月20日頃に地球に最も近づいた後、その姿は遠ざかり、太陽系を去ります。
4. 科学的意義と「人工物説」
その特異な軌道と挙動から、一部の科学者からは、太陽系を調査するために意図的に設計された人工物ではないかという仮説も提唱されました。
しかし、主流の科学的見解は、これらの特徴を太陽系外の環境で形成された彗星特有の自然現象として説明しようとしています。
3I/ATLASは、太陽系外の物質や、惑星系形成の普遍性を探るための比類ない研究対象として、今後も重要な手がかりを提供し続けるでしょう。

